8度目のワールドタイトルを決めたときとまったく同じ展開だ。今シーズンはフル参戦しないと公言していて、開幕2連勝みたいな。もともとタヒチには行くつもりでいたし、このチャンスをみすみす放っておくということは考えにくいので、今シーズンも結局ケリーはツアーをフルで回ることになるのだろう。そして、普通に、順当に行くなら、サーフィンを見る限り9度目のタイトルは固い。そうなれば、10度目って話になるわけだし、周囲の期待は大きくなるばかりだ。本人がどんなにやめたくても、やめさせてもらえない。
しょうがないかなと思う。あのサーフィンが出来て、ああやって勝てて、世界の最高峰のサーファーたちに、ケリーがツアーにいて自分たちを刺激してくれることは喜ばしいことだ(表彰式でのビード・ダービッジのコメント)って言わせてしまうだけの逸材だから、本人の好むと好まざるにかかわらず、引っ張りだされてしまうんだと思う。
普通36歳にもなったアスリートは、時代の最先端を歩くことはまれだ。しかしケリーはそのサーフィンの内容で、まだまだ最先端を走り続けている。そこが彼の一番すごい部分だ。過去の栄光ではなく、現在の実力で勝つ。これは本当にすごいことだと思う。
記者会見の後に少し話したけど、なんか、とてもメロウな感じがした。時にけっこう神経質になってしまうケリーなのだが、なんとなく、いつになく柔らかい感じの印象だった。
もちろん、すでになすべきことは成し遂げたし、いまさら失うものもないし、のんびり楽しんでやろうと思っているんだろう。それでも試合ではきちんと厳しいコンペティターの部分を持っているし、その心理戦やヒート運びの上手さは彼の右に出るものはない。ツアーは楽しんでも、勝負に負けるのは何よりも嫌いな人だから。
今日も波の取り方の駆け引きとか、サーフィン以外の細かい部分で、う†んとうなるところがずいぶんあった。タジがプライオリティを持っているのに、ケリーが沖から乗って、テイクオフ後にタジの後ろに回りこみ、タジはしっかりそれを見ていたけど、その波をケリーに乗らせる決断をする。もちろん決していい波に見えなかったし、実際にいい波とは言いがたい波だった。でも、それでケリーは6.50をマークしてしまうのだ。その時点までのタジとケリーのスコアラインは4点台だったから、これはタジにとってはしてやられたり。でもそういう、波の盗み方というか、取り方はさすがキャリアだな、と思う。それはもうどの選手も口をそろえて、できればケリーとはファイナルまで当たりたくない、というのもうなづける。サーフィンばかりでなく、コンテストでの駆け引きのテクニックも他の選手より格段に上だ。嫌な対戦相手。
この2連勝で、今シーズンはケリーを中心にツアーが回っていくことになりそうだ。まぁ、現状のサーフィン業界にとっては、この人が居てはじめてマーケットが成り立っているという印象が大きいので、喜ばしいことではあるのだろうが……。