昨シーズンのドリームツアーは、なかなかいい波に恵まれず、今年はそれより悪くなることはないだろう、とみんなが思いながらスタートした今シーズンだったけど、どうもやっぱり、波が良くない。
初戦から期待した波が入らず、男子オープニングイベントのクイックシルバープロは、順調というには程遠い進行状況だった。しかし、ファイナルデーにはセットの間隔こそ長かったものの、ロングライドが可能なスナッパーロックスの波がやってきて、ビーチを埋め尽くしたギャラリーの歓声が会場全体に響き渡った。それもそのはず、試合の展開はほとんどのギャラリーのお望みの結末だったからだ。
1にケリー、2にファニング、3、4がなくて5にパーコみたいな。
結果的には一方的な展開になったが、久しぶりのケリー対アンディという因縁の対決や、ファニング対モリソンといった地元のファンを2分するような対決や、ツアー2年目の若手、ジェレミー・フローレスの3位入賞など、話題には事欠かないイベントだった。
しかし、一夜明けて振り返ってみると、この試合は結局ケリーがどれだけすごいかを証明したような試合だった。それはサーフィンもそうだし、人気もそうだし、ステージの上でのコメントもそうだし、素直に喜びを表す振る舞いもそうだし、とにかく彼を失う事がどれだけ今のサーフシーンにとってマイナスかを見せ付けられたような試合だった。
各ヒートごとに彼が見せたサーフィンは、やはりまだまだひとりだけ違うレベルだということを強く印象付けた。同じ事をやっている選手はいないし、サーフィンの完成度や技の多彩さ、波の使い方、コンテストでの駆け引き……どれをとっても明らかに彼がダントツだった。今、世界でサーフィンが一番上手いのは誰か、という疑問に対する答えは、この試合で誰の目にも明らかに見えていた。
ケリーのヒート前になるとどこからともなく人が集まり始め、人ごみが動けばその先には必ずケリーがいる、といったような、ここ数年世界各地で繰り広げられているギャラリーの一点集中ぶりは、ここでもまったく変わらなかった。ケリーだけを見に来ているギャラリーが、ギャラリー全体の半数以上ではないかと思われる人の動き方だ。
もしかしたら彼らはケリーしか知らないのかもしれない。たとえばゴルフにまったく興味のない人も、タイガー・ウッズだけは知っていて、近くにタイガー・ウッズが来ている、となれば見に行くのと同じようなことなのではないかと思う。それだけケリーの人気が一般に浸透しているということだ。
常時そういったツアーの様子を見ていると、やはり、何かにつけて、もしケリーがいなかったら……ということをつい考えてしまう。
王者が王者であるゆえんを、まざまざと世界に見せつけた2008年のオープニングイベントだった。